死の淵

6時過ぎに起床して、8時半前くらいに家を出る。

高速の入り口に向かう途中から、嫁がしきりに
「光が目に入るとチカチカして辛い。気持ち悪い。」
と不調を訴え続けるので、顔にタオルを掛けさせる。

しかし高速に乗って暫くすると、
体を前後に揺さぶる仕草をするように。
「大丈夫かー?」と問うても返事が無い。

とりあえずこのままじゃまずいと思い、
次のランプで降りようと思い始めたその時。
助手席の嫁が急に、仰け反るように俺の方に体を寄せてきた。
何だと思って顔を見ると、白目を剥いて泡を吹いている。

ヤバイと思って車を路肩に停車。
大声で名前を呼んで頬を引っ叩くが、体が痙攣していて反応が無い。
とにかく息をしていないので、気道を確保しなければと思い口を開けようとするが、
全身が引き付けを起こしているようで、口が全然開かない。

それでも無理矢理に口を抉じ開け、手を突っ込んで、
のどの奥に落ち込んでいる舌を引っ張り出す。
気道が開いた瞬間、肺から一気に空気が出てきた。
過呼吸みたいな状態だったのだろうか。とにかく横にして唾液を外に流し出させる。

暫く(と言っても数秒だと思うが)すると、自発的に鼻で呼吸をし始めた。
そのうち目にも光が出てきて、口の中の手にも息使いを感じるようなったので、
手を離して様子を見た。

お腹の方が気になったので触ってみるが、張ったりしてはいなかった。
嫁は多少錯乱している様子だが、質問にも受け答えるようになった。

この後どうしようかと思ったが、
これから救急車呼ぶ位だったらこのまま直接行った方が早いと判断。
嫁もとりあえずは持ちそうだったので、そのまま病院に向かった。